世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)2026に参加しました

こんにちは。NPO法人Waffle代表の田中沙弥果です。

 

世界経済フォーラム🌍の年次総会(通称ダボス会議)2026に参加してきました。
朝7:30から夜までほぼ毎日予定が入っていて、振り返る時間もなかったです。時差ぼけとか言っている暇すらないくらい、intenseな一週間でした。

朝はシャトルバスに乗れば、1時間ほど5人の「はじめまして」の人と、「どんな仕事をしているの?」から会話が始まり、毎日いろんな人々と出会いました。

私の今回の参加の目的はいくつかあるのですが、そのうちの2つが、「Inclusive AIの議論を持ち帰る」「AI教育について他国の情報を知る」でした。

 

他国のAI教育について



Corporate Ladders, AI Reshuffledのセッションに行きました。

登壇者はAndrew Ng(Founder, DeepLearning.AI)で、ご存じの方も多いかと思います。さらに、UAEの教育大臣であるSarah bint Yousif Al Amiri(Minister of Education, Ministry of Education of the United Arab Emirates)も登壇されていました。UAEは、世界で初めてK-12でAIリテラシーを公教育で義務付けました。

UAEの教育システムは、AIツールの使い方、批判的思考、情報の取捨選択能力を教える方向に転換する必要があるとされています。UAEではすでにK-12教育でAIリテラシーを必修化し、教員のトレーニングも行っています。
ソーシャルメディアの例を挙げ、適切な使い方を教えなければ、AIも悪影響を及ぼす可能性があると指摘されていました。

私は日本の文部科学省中央教育審議会 情報技術ワーキンググループで委員をしており、そこでも、小・中・高・大の系統性をどうするかという議論があったので、それについて質問をしました。

回答がめちゃくちゃ良かったので、せっかくなので長いですが、日本語訳をすべて掲載します。

UAEの教育大臣
    • 日本語訳はこちら
      • 「はい、もちろんです。では、私たちがこれまでに取り組んできた基本的な成果についてお話しします。
      • それが今後どのように進化していくべきか、明確な答えがあるかというと、正直なところ“いいえ”です
      • 私たちのAIカリキュラムは“生きているカリキュラム”であり、前に進むにつれて変化し続ける必要があるからです。
      • ただし、段階ごとに説明していきます。
      • まず、幼稚園の子どもたちについてですが、彼らにとって重要なのは、私たちは子どもに対して“AI”という言葉を使わないということです。
      • 私たちはそれを“ロボット”と呼びます。つまり、「何かをするロボットが存在する」という理解です。
      • そして、そのロボットが何かをするためには、大人の監督が必要である、ということを理解してもらいます。
      • 子どもたちがそれと関わるためには、大人の関与が不可欠だという点が重要です。
      •  
      • 次に、少し成長してAIに触れ始める年齢の子どもたちには、AIがどのように動いているのかを、とてもシンプルな形で理解してもらうことが重要になります。
      • ここで機械学習の話に戻ります。
      • 私たちは、AIとは「与えられた情報に基づいて判断や見方を構築するもの」だと教えます。
      • もし単一の種類の情報しか与えられなければ、その視点も偏ったものになります。
      • 例えば、よくある例として、青りんごを見せて、『これはりんごか?赤りんごはりんごか?』といった形で説明します。
      •  
      • そして中学校・高校の段階に進むと、ここで初めて“批判的思考(クリティカル・シンキング)”の要素を組み込んでいきます。
      • それは自分の倫理観や価値観と合致しているか?
      • AIから得た回答は妥当なのか?
      • 自分が与えたプロンプト(指示)は、求めている知識の深さを引き出すのに十分だったのか?
      • どのような文脈で使うべきなのか?
      • また、どこからが本当の意味での盗用(プラジアリズム)で、自分が努力をしていない状態なのか?
      • そうした問いを投げかけていきます。
      •  
      • その次に来るのが、教育者自身が、人生のさまざまな段階でAIにどう向き合うべきか、どのような知識に触れる必要があるのか、という再考です。
      • これは皆さんも触れていましたが、“専門性のレベル”の問題です。
      •  
      • 人々がAIを効果的に使うためには、特に現代においては、最低限必要な知識レベルが存在します。
      • AIを“有効なツール”として使うための基礎知識です。
      • 私たちが今、重点的に取り組んでいるのは、学生たちが“中核となる知識体系”を身につけ、その上でスキルを活用できるようにすることです。
      •  
      • 先ほども触れましたが、重要なのは批判的思考、そしてレジリエンス(回復力)、適応力です。
      • 適応力とレジリエンス、そして批判的思考が組み合わさることで、学生は「学び、そして学び直す力」を身につけることができます
      •  
      • これは、教育システム全体における長期的な変革の話です。
      • 多くの要素を内包した仕組みを構築する必要があり、それには時間がかかります。
      • しかし、そのプロセスを通じて、私たちは“今の教育の枠組み”から抜け出し、
      • 本来目指すべき成果を生み出せる教育の姿へと移行していく必要があります。

  • <このセッションの全ての動画をこちらでみれます>

    https://www.youtube.com/watch?v=NCwEw7pI7JY



    さらに、China's AI+ Economyのセッションにも参加し、Gong Ke先生(南開大学 新世代人工知能発展戦略研究所 執行理事)に質問しました。


    <このセッションの全ての動画をこちらでみれます>

    https://www.youtube.com/watch?v=8NtZ9mFx_DU

 

その他、このセッション全体の話として、AIは多くの職務を破壊する可能性があるが、特にエントリーレベルの仕事が完全になくなるわけではない、という点が語られていました。重要なのは、現在の教育システムが時代遅れであり、AIを活用するスキルを教えるように、カリキュラムを緊急に改訂する必要があるということでした。

また、将来の労働市場では、誰もがコーディング能力を身につけることが重要になるという話もありました。「誰もがコードを書く」とは、伝統的なコーダーになることを意味するのではなく、AIの助けを借りて、自分の専門分野でコードを生成・活用する能力を持つことを意味します。このスキルを持つ人材は生産性が高く、業界を問わず価値が高まるとされていました。

コンピュータサイエンスの卒業生は、大手テック企業だけでなく、他業界の人事や財務などの部門でAIスキルを活かすべきであり、そのためには考え方をリセットする必要がある、という話でした。

 


AGIがもたらすリスクと対応

AGIは大きな利益をもたらす一方で、制御不能、悪用、経済的混乱といった深刻なリスクも伴います。これらのリスクを克服するためには、企業、研究者、政府が協力し、緊急性を持って対策を講じる必要があるという話がありました。

今後数年間で対処すべき主要なリスクとして、以下が挙げられます。

  • 自律性の高いシステムの制御

  • 個人による悪用(例:バイオテロ

  • 国家による悪用(例:中国共産党などの権威主義政府)

  • 経済的影響(例:労働者の置き換え)

技術によってさまざまな利益が生まれる一方で、不利益をどうコントロールしていくかについても研究開発が必要であり、マルチステークホルダーで対応していく重要性がある、という学びでした。

また、不利益についてきちんと義務教育の中で倫理面の教育をさらに行う必要があることも感じました。


Inclusive AIについて

女性起業家のセッション

今回たくさんのセッションがあった中で、DEIに関するセッションは、一般向けが一つ(Future of Inclusion)と、クローズドセッション(招待制)がいくつかあるだけでした。

てっきりAI関連のセッションでは、AIのガバナンス、倫理、デジタルデバイドインクルージョンといったテーマが毎回のように話題に上がると思っていたのですが、少なくとも私が参加していたセッションでは、ほとんど触れられていませんでした。

一つだけ印象的だったのは、スリランカの首相が女性で、彼女が「国の経済的発展は、無償労働ケアワークなど)の上に成り立つ社会ではなく、包摂的にさまざまな人が経済発展に関われるように設計されるべきだ」ということを大前提として話していた点です。これは非常に良かったです。

ダボスに18回ほど参加しているグロービスの堀さんのブログにも、「サステナブル」や「DEI」が禁句になっていたと書かれていたので、今回は相当DEIが消え去ってしまったのだろうと思います。


ダボスという街は人口減少

また、ダボスで毎年開催されることについて、現地の方からも話を聞きました。
ダボスも人口減少が起きており、世界経済フォーラムが開催されるイベント週に莫大な収益が得られるそうです。この一週間でホテルは一年分の利益を得られるため、普段の稼働率が40%でも問題ないとのことでした。

一方で、賃貸物件がイベント週の短期貸しに偏り、通年居住用に回らず、人が住めない街になっているという話も聞きました。これはサイドイベントの影響が大きく、サイドイベントが主催イベントと同等、もしくはそれ以上の規模で開催されていることが背景にあるようです。

住民のことを考えると、too muchすぎません?
世界経済フォーラムは対策を打たなくて大丈夫?と思ったりしました。


面白かったこと

YGL

Financial Timesの朝食会に間に合わなかったため、ラウンジで一人でパンを食べていたところ、一人の男性が会釈をしてくれたのでご挨拶しました。
すると、その方は今回のOpen Concertを企画・管理し、グラミー賞を運営している会社の方でした。パートナーはコンピュータサイエンティストとのことで、Waffleが実施している内容を非常に重要だと思う、と言ってくれました。

私が「今回のアニュアルミーティングで、レッドカーペットを敷いて、みんながドレスアップするのを世界経済フォーラムに提案したらいいと思う」と言ったところ、「たしかにそれは良いアイデアだね。提案してみるよ」とのこと。
来年レッドカーペットがあったら、私のアイデアということで。笑

非営利セクターで、日本だけで活動していると出会わない領域の人たちとの交流はとても面白かったです。とくに、それが次のご縁につながるかは分かりませんが、その場で少し会話を交わすだけでも楽しかったです。


 

左のジョージアの方とコラボの話をしたり、右側のオーストラリアの方は誕生日が一緒!

別の話ですが、女性エンパワメントを推進するオーストラリアの方と、まさかの誕生日が一緒…!
さらに、草野えみちゃんとAIアーティストで集まった3人が、3人とも誕生日が同じだと言っていて、「そんなことある???」と思っていたら、私も同じ誕生日でした…!

同じ女性エンパワメントの文脈で世界経済フォーラムで出会い、しかも同じ誕生日なんて、運命すぎる……。


その他、3日目は「平和のセッションはオンラインで見ればいいや」と思っていたのですが、どうやらライブ配信がなく、歴史的瞬間だったようで、見逃してしまったことを少し後悔しています……。

トランプ大統領ダボス会議で「平和評議会」の憲章に署名
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_167602/)


などなど、他にもたくさんシェアできることはありますが、まずはAI教育、ジェンダーに関すること、その他の感想をまとめました。

10日間ほど、1歳の子どもをずっと見てくれていた夫・義母に感謝です!

 

その他写真で..!

トランプ大統領。会場の全員の関心度の高さ。

赤沢経済産業大臣は大変お忙しい中個別にお時間を割いてくださりお話できました🙇‍♀️

スリランカの首相が女性!

イーロンマスク